木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

『アルプスの少女』

ヨハンナ・スピリ 講談社

少年少女世界文学館の16に入っている。他の本だと『アルプスの少女ハイジ』などの題名で出ているものもある。

1800年代末の作品ながら古さを感じさせない。キリスト教が色濃く影を落としていて、それが貧富の差につながったり、人生観につながったりしているが、そういう倫理観は仏教にもあるだろう。そういう信仰を背景にして、アルプスという自然のなかで生き生きと生きる少女が美しい。

『完訳 日本奥地紀行3 北海道 アイヌの世界』

イザベラ・バード 平凡社

昔、東北編は読んだことがあるが、北海道篇については読んだことがなかった。

友人と話していて、なぜ読む人が少ないのだろうか、北海道篇はマイナーなんだろうか、ひょっとしてアイヌを差別的に書いているのではないか、と話したのが、読む契機になった。

特に差別的な書き方はなく、むしろ北海道の和人たちの方が野蛮な感じに描かれている。当時の北海道が描かれていて参考になった。

『神様の暇つぶし』

千早茜 文芸春秋

たまたま図書館で借りてきた。

死んだ父親の友人であるカメラマンと恋に落ちる。主人公は大学生。交友関係も出てきて、やや立体的な構成になっている。情交後の肢体がカメラでとらえられ、写真本となる。

『よろこびの歌』

宮下奈都 実業之日本社

久しぶりに宮下の小説を読んだ。文章が読みやすく内容もいい。

声楽を志す女の子が音大付属高校の受験に失敗するところから物語は始まる。新設高校の普通科に入学して、挫折感を味わう。そこからの変化が主人公の女の子の自立へとつながっていく。