2021-03-22 『灯台からの響き』 宮本輝、集英社 中華そば屋の康平が主人公。奥さんが店で倒れて亡くなる。その後本の中から奥さん宛にきたハガキが出てくる。関係のない人からのハガキだと言っていたがどういう関係か、たどり始める。 結婚前の奥さんの意外な秘め事が明るみに出る。決してわるいことではなく、奥さんの人柄の偲ばれる過去であった。 宮本輝らしい小説である。
2021-03-12 『ふがいない僕は空を見た』 窪美澄著、新潮社 エロティックな文章が多く、最初の方はあきれて読んだが、全体を通しては割合気持ちよく読めた。 こうした愚かさも含めて、人間は人間なのだろうと感じた。
2021-03-08 『重き流れの中に』 椎名麟三、新潮文庫。 「深夜の酒宴」「重き流れの中に」「深尾正治の手記」の3篇が入っている。 これも学生の頃に読んだことがある。それを思いだして今回読んでみたが、当時の感動はなかった。ただ、ドストエフスキーの影響とみられる感じはユニーク。風景的なリアリズムでなく人間の内面的なリアリズムは参考になった。
2021-03-03 『熱い風』 小池真理子。集英社 熱い恋のなか婚約者が突然亡くなる。彼を思いだしながらのパリ、ブリュッセル、アムステルダムへの旅。恋のなか彼に疑念はあったのだろうかと考えながら旅は続く。
2021-03-01 『風立ちぬ・美しい村』 堀辰雄、岩波文庫 若い時に2度ほど読んだ記憶があるが、内容を覚えていない。 再度読んでみて、とくに「風立ちぬ」がよかった。 死がモチーフになっているが、粗暴なイメージではなく、友人であるような描き方がいい。