木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

『灯台からの響き』

宮本輝集英社

中華そば屋の康平が主人公。奥さんが店で倒れて亡くなる。その後本の中から奥さん宛にきたハガキが出てくる。関係のない人からのハガキだと言っていたがどういう関係か、たどり始める。

結婚前の奥さんの意外な秘め事が明るみに出る。決してわるいことではなく、奥さんの人柄の偲ばれる過去であった。

宮本輝らしい小説である。

『重き流れの中に』

椎名麟三新潮文庫

「深夜の酒宴」「重き流れの中に」「深尾正治の手記」の3篇が入っている。

これも学生の頃に読んだことがある。それを思いだして今回読んでみたが、当時の感動はなかった。ただ、ドストエフスキーの影響とみられる感じはユニーク。風景的なリアリズムでなく人間の内面的なリアリズムは参考になった。

『風立ちぬ・美しい村』

堀辰雄岩波文庫

若い時に2度ほど読んだ記憶があるが、内容を覚えていない。

再度読んでみて、とくに「風立ちぬ」がよかった。

死がモチーフになっているが、粗暴なイメージではなく、友人であるような描き方がいい。