木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

『小川洋子と読む内田百閒アンソロジー』

内田百閒 小川洋子編 ちくま文庫

内田百閒には縁を感じる。全集もあり、生原稿も手元にある。

全集を読むには気力がいるが、文庫でアンソロジーを読んでみたくなって買った。

やはりいい。膨大な随筆もあるが、短編のよさは百閒ならでは。

このアンソロジーでは、小川洋子が選んだ24編が納められている。小川と言えば『博士の愛した数式』など明らかに内田百閒の影響を感じてたいたが、選んだ短編ごとに寸評がついていて、これも楽しい。

内田百閒を読みふけったのは30代だったか。滝野川の古本屋「街書房」の齋藤夜居さんとの出会いからだ。齋藤さんは古本屋を始める前は葬儀屋だった。葬儀屋をやりながら艶本研究家だった。2階の貴重な本を1階に降ろして古本屋を始めたわけだ。娘さんがお年頃を迎えて、葬儀屋では差支えが出るだろうという配慮からだ。素人の古本屋で、値付けが安くて、本業の古本屋がごっそり購入して棚が空いてしまったなどの失敗談も聞かされた。顔を出すと2,3時間は話し込んだ。限定の雑誌を発行していて、私も書いたことがある。

そんなことから、おかげで、羊皮の百閒の限定本などが手元にある。

そうそう、なにか文章のいいものを読んでみたい、と齋藤さんに話して、勧められたのが百閒との出会いだった。