木ノ内博道の読書ノート

読んだ本の備忘録です。

『ラスト ラン』

角野栄子角川書店

魔女の宅急便』の著者が書いた、自伝的小説と言える。

74歳のイコさんはバイクツーリングにでかける。目的地は5歳で死別した母の生家。手掛かりは、母が12歳のときの写真。たどり着いたその家には不思議な少女が住んでいた。少女は幽霊の母。幽霊と言ってもそれらしくない明るい前向きな幽霊。

子どもの母親との交流。

『蜩ノ記』

葉室麟 祥伝社

読みたいと思っていた本だが、とくに急ぎ読む本でもないと思っていた。ブックオフで200円で出ていたので、求めた。

武士の倫理を生きながら、死んでいく世界が描かれる。うまい小説だな、と思わせる。

いま、テレビで渋沢栄一の『論語と算盤』をやっている。倫理性とともに計算も必要な世界。

 

『エトルリアの微笑み』

ホセ・ルイス・サンペドロ著、NHK出版

老人が主人公。ガンで残された命はわずか。生まれ故郷に別れを告げて、息子夫婦の住むミラノに旅立つ。移動の途中、ローマの博物館でエトルリアの遺物「夫婦の棺」が老人の心をとらえる。棺だというのに夫婦は幸せそうに微笑んでいる。

ミラノは薄汚れまがい物であふれた街だった。しかしそこで見つけたものは。

老人の心の変化。

昔読んだ『ライフサイクル・その完結』を思い出す。発達心理学エリクソンの死後、同じ研究者であった奥さんが書いたものだ。老人にとっての発達の課題について書かれたもので、乳児の発達課題である「信頼」と同じものが老後の課題だと書いてあった。信頼して死んで行ける。そんなことを思い出した。

 

『うつくしい繭』

櫻木みわ 講談社

東ティモールラオス南インド、西南諸島を舞台にした4つの短編。

東ティモールの少女は死者の声を聞くことができる。

ラオスの山奥では、親友と婚約者に裏切られた女性。

南インドに、兄のためにがんの新薬を探しに来た女性。

日本、西南諸島でふしぎなとうめいな石を見つけた女性。

それぞれの小説が一つのテーマにつながるようでもある。

『ヒストリア』

池上永一角川書店

第二次世界大戦沖縄戦を奇跡的に生き延びた少女が、ボリビアに移住する。沖縄戦での生き延び方もリアリティがあるが、ボリビアを中心にラテンアメリカを駆け巡る主人公の動きも緻密に書かれている。

単行本で629ページ。分厚い本だが、楽しく読めた。

『海神の島』

池上永一中央公論新社

3人の姉妹が沖縄の秘宝を探す小説。

米軍基地内にある海神の墓を守ってほしいという祖母の願いに、それぞれ個性派ぞろいの姉妹がチャレンジする。

この小説の魅力は、話題のユニークさにあるだろうか。それぞれのシーンに見合った意外なエピソードが面白い。

『奇妙な仕事』『死者の奢り』

大江健三郎全小説1、講談社

大江健三郎が学生時代に書いた2つの小説ともアルバイトについての小説だ。『奇妙な仕事』では150匹の犬を殺すためにアルバイトを始める。『死者の奢り』では大学病院の死体保存のプールでのアルバイト。