木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

『恍惚の人』

有吉佐和子 新潮文庫

昭和57年の発行である。老人問題の先駆といえる。

祖母が自宅で亡くなっていて、その頃から祖父の様子がおかしい。

胃腸の弱かったはずがよく食べる。徘徊をする。徐々に体が弱っていくが、怒りんぼだった祖父が笑うようになる。人間が死に向かっていく様をよく描いている。

『アルプスの少女』

ヨハンナ・スピリ 講談社

少年少女世界文学館の16に入っている。他の本だと『アルプスの少女ハイジ』などの題名で出ているものもある。

1800年代末の作品ながら古さを感じさせない。キリスト教が色濃く影を落としていて、それが貧富の差につながったり、人生観につながったりしているが、そういう倫理観は仏教にもあるだろう。そういう信仰を背景にして、アルプスという自然のなかで生き生きと生きる少女が美しい。

『完訳 日本奥地紀行3 北海道 アイヌの世界』

イザベラ・バード 平凡社

昔、東北編は読んだことがあるが、北海道篇については読んだことがなかった。

友人と話していて、なぜ読む人が少ないのだろうか、北海道篇はマイナーなんだろうか、ひょっとしてアイヌを差別的に書いているのではないか、と話したのが、読む契機になった。

特に差別的な書き方はなく、むしろ北海道の和人たちの方が野蛮な感じに描かれている。当時の北海道が描かれていて参考になった。

『神様の暇つぶし』

千早茜 文芸春秋

たまたま図書館で借りてきた。

死んだ父親の友人であるカメラマンと恋に落ちる。主人公は大学生。交友関係も出てきて、やや立体的な構成になっている。情交後の肢体がカメラでとらえられ、写真本となる。