木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

2024-01-01から1年間の記事一覧

『ツミデミック』

一穂ミチ 光文社 コロナ禍を舞台にした犯罪をテーマにした短編集。直木賞を受賞としている。 が、『日のあたるとこにいてね』がよかったので、あまり楽しくはなかった。 しかしパンデミックの後に出てくる小説としてはいいのではないかと思う。

『十の輪をくぐる』

辻堂ゆめ 小学館 表紙裏にこうある。「スミダスポーツで働く泰介は、認知症を患う80歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校2年生の娘とともに暮らしている。あるとき、万津子がテレビのオリンピック特集を見て…

『きょうの日はさようなら』

一穂ミチ 集英社 2025年の夏、永い眠りから覚めた30年前の女子高生をめぐるせつなくて、すこし不思議な物語、と帯にある。 30年前の描き方がうまい。

『あめりかむら』

石田千 新潮文庫 5つの短編が掲載されている。 一穂ミチさんが解説をしているので読んでみた。 なるほど、上手に書こうと思わない方がいいんだな、というような感想。

『光のとこにいてね』

一穂ミチ 文藝春秋 子どもの頃、数度会った二人の少女。高校生になってまた出会いがあって、大人になって3度目の出逢い。お互い結婚していて、片方は流産を経験し、もう片方は少女がいる。 二人の交流は当然素晴らしいものだが、主人への目の向け方、それ以…

『精霊流し』

さだまさし 幻冬舎 けっこうな長編である。里見公園が出てくるというので読んだ。さだまさしの市川での暮らしが描かれている。

『スモールワールズ』

一穂ミチ 講談社 6篇の小説で構成されている。それぞれ関連はしていなくて、内容は濃い。 完成度は高く、良い短編である。

『雁の寺・越前竹人形』

水上勉 新潮文庫 二つとも好みの小説である。社会派推理からスタートした水上勉が人間を書こうとしている。

『ソーネチカ』

リュドミラ・ウリツカヤ 新潮社 本好きの少女が図書館に勤務するようになりそこに来た男と結婚する。子どもが生まれ、その少女が学校に通うようになり、友人ができる。夫がその子と恋をする。しかし、ソーネチカは自分の恵まれた環境に感謝する。

『水たまりで息をする』

高瀬隼子 集英社文庫 ある日、夫が風呂に入らなくなったところから小説は始まる。結婚して十年、妻は夫の妙な行動にどう対応していくのか。耐え難い夫の体臭や周囲の視線、義母からの非難。正常から逸脱。並行して子どもの頃飼っていた魚を処分する話が語ら…

『いなくなった私へ』

辻堂ゆめ 宝島社文庫 人気絶頂のシンガーソングライターが渋谷のゴミ捨て場で目を覚ます。素顔を晒しても誰も分かってくれない。街頭ビジョンでは自分が自殺したという映像が流れている。目いっぱい不思議な出だしである。その不思議な感覚はなかなか解決の…

『君といた日の続き』

辻堂ゆめ 新潮社 書店で何気なく買った小説だが、面白かった。筋書きの紹介はしづらい。 帯の紹介をしておく。 「リモートワークを言い訳に引きこもっていた僕はある日、ずぶ濡れの女の子を拾った。1980年代からタイムスリップしてきたらしい彼女は、僕の大…

『ラウリ・クースクを探して』

宮内悠介 朝日新聞出版 ソ連時代のエストニアを舞台にした小説。高校生直木賞を受賞している。 コンピュータ・プログラミングを話題にしている。 いい本だった。

『隣の百合おばさん』

城唯士 発売・幻冬舎 大学を卒業して就職するが、退職。母と友人のおばさんに案内されてスナックを手伝う。いろいろな経験をして、それまでぼんやりしていた人生観から生き方を考える。進路を決める男の物語。

『また、桜の国で』

須賀しのぶ 祥伝社文庫 『革命前夜』を読んで、同作者の本が読みたくなって手に取った。1938年に、外務書記生がポーランドの日本大使館に着任したところから物語は始まる。ナチス・ドイツが周辺国へ侵攻の姿勢を見せ、緊張が高まるなか、日本にやってきたこ…

『QED 神鹿の棺』

高田祟史 講談社文庫 茨城の神社を中心に祀られた神のいわれなどが紹介されながら、小説自体はミステリー仕立てになっている。 個人的にも日立の近くの大甕に想いでもあり、銚子周辺の名だたる神社のいわれも興味深かった。

『家族の言い訳』

森浩美 双葉文庫 家族を題材にした8篇が納められている。 最初の、「ホタルの熱」がよかった。

『革命前夜』

須賀しのぶ 文春文庫 昭和最後の日に日本から東ベルリンに音楽留学した主人公の東ベルリンでの出会いや事件。 驚くのは、当時の東ベルリンに行ったこともないのに、まるで現場に立ち会ったような筆運び。冷戦下のドイツの雰囲気が伝わってくる。すごいと思う…

『銀杏手ならい』

西條奈加 祥伝社 子どもに恵まれずに離縁されて実家の手習い所を継ぐことになった24歳の萌。子どもたち相手に忙しない日々を送っていると、ある朝、銀杏堂の門前に女の子の捨子があった。自身も血のつながらない両親に愛情深く育てられた萌はその子を授かり…

『恍惚の人』

有吉佐和子 新潮文庫 昭和57年の発行である。老人問題の先駆といえる。 祖母が自宅で亡くなっていて、その頃から祖父の様子がおかしい。 胃腸の弱かったはずがよく食べる。徘徊をする。徐々に体が弱っていくが、怒りんぼだった祖父が笑うようになる。人間が…

『風の盆恋歌』

髙橋治 新潮文庫 不倫の恋の話である。風の盆の祭りを描きながら美しい仕上がりの小説。この内容そのものが石川さゆりの歌にある。 若いころに出会い、年を経た今、物語は動き出す。死をかけて。

『アルプスの少女』

ヨハンナ・スピリ 講談社 少年少女世界文学館の16に入っている。他の本だと『アルプスの少女ハイジ』などの題名で出ているものもある。 1800年代末の作品ながら古さを感じさせない。キリスト教が色濃く影を落としていて、それが貧富の差につながったり、人生…

『完訳 日本奥地紀行3 北海道 アイヌの世界』

イザベラ・バード 平凡社 昔、東北編は読んだことがあるが、北海道篇については読んだことがなかった。 友人と話していて、なぜ読む人が少ないのだろうか、北海道篇はマイナーなんだろうか、ひょっとしてアイヌを差別的に書いているのではないか、と話したの…

『悪女について』

有吉佐和子 新潮文庫 美貌の女実業家が登場するわけではない。27人の周辺の人たちに聞く形で物語は始まる。しかも死んだというところから始まり、女の生きざまがいろいろに語られる。

『開幕ベルは華やかに』

有吉佐和子 文春文庫 演劇界の裏話などが書かれており、事件が起きる。面白かった。

『神様の暇つぶし』

千早茜 文芸春秋 たまたま図書館で借りてきた。 死んだ父親の友人であるカメラマンと恋に落ちる。主人公は大学生。交友関係も出てきて、やや立体的な構成になっている。情交後の肢体がカメラでとらえられ、写真本となる。

『よろこびの歌』

宮下奈都 実業之日本社 久しぶりに宮下の小説を読んだ。文章が読みやすく内容もいい。 声楽を志す女の子が音大付属高校の受験に失敗するところから物語は始まる。新設高校の普通科に入学して、挫折感を味わう。そこからの変化が主人公の女の子の自立へとつな…

『しろがねの葉』

千早茜 新潮社 従来と小説のトーンが異なりびっくり。戦国末期の石見銀山が舞台。少女が銀山で働きながら生活の場としていく。欲望と死の影響を受けて生き抜いていく。ずっと候補だったが、この作品で直木賞受賞。

『青い壺』

有吉佐和子 文春文庫 無名の陶芸家が焼いた青磁の壺がいろいろな人のところを巡る話。 そして長旅をした壺は陶芸家のところにもどってくる。

『へんろ宿』

藤原緋沙子 新潮文庫 江戸回向院前の安宿に集うわけありの旅人たち。旅人からの訳ありの相談にのりながら元気をもらいながら帰っていく。こういう宿があったら、と思う。