木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『生を祝う』

李琴峰 朝日新聞出版 子どもの権利は子ども自身にある。当事者にあるものと言える。では胎児に聞くことができたらどうなるのか。信仰をもっていない人でも、子どもは授かるものと考えたりするが、この近未来小説では、言語の基礎になる普遍言語で胎児に生ま…

『タンノイのエジンバラ』

長嶋有 文春文庫 本の題名になったこの小説以外に3つの小説が載っている。 隣家の娘を預かることになる話や真夜中に実家の金庫を盗むはめになる3兄弟の話などどこかおかしい話だが、静かな笑いを感じさせる。不思議な味の小説と言える。

『もうひとつの「流転の海」』

宮本輝 新潮文庫 9部にわたる「流転の海」のストーリーで、随所にでてくる局面を短編で書いている。それを集めた短編集、と言える。ただ、微妙に話が違っていて、どちらが本当なのか、あるいは両方ともフィクションなのか、と考えてしまう。「流転の海」を読…

『コゴロシムラ』

木原音瀬(このはらなりせ) 講談社文庫 因習の村で巻き起こる社会派ホラーミステリー、と帯にある。 残念ながらこの人の本を読むのは初めて。かなりの著作があるようだ。 ライターとともに取材に訪れたカメラマンが主役。山で道に迷い、ようやく民家にたど…

『野の春ーー流転の海 第9部』

宮本輝 新潮社 これが完結編。どのような終わり方をするのか、読み始めると同時に気になったが、思い通りというか、執筆37年という大河小説として、納得のいく終わり方だった。 主人公、熊吾の人生、そして妻、房江の生き方、息子の伸仁。大河小説には登場人…

『長流の畔--流転の海 第8部』

宮本輝 新潮社 いよいよ8部までこぎつけた。 なかなか良かった。 帯から紹介しておこう。 執筆35年 ついに次作・第9部で完結 東京オリンピック開幕前後、66歳の松坂熊吾は金策に窮した。大阪中古車センターをオープンさせるも、別れたはずの愛人・博美との関…

『満月の道--流転の海 第7部』

宮本輝 新潮文庫 9部まである内のこれは7部。 駐車場管理は奥さんや子どもにまかせて、主人公は中古車販売をスタートさせる。事業にはお金が絡んでくるが、やはり金に困る。これまでと同じく、信頼していた部下に裏切られる。さらに他にも金が入用になり、窮…