木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

『アルプスの少女』

ヨハンナ・スピリ 講談社 少年少女世界文学館の16に入っている。他の本だと『アルプスの少女ハイジ』などの題名で出ているものもある。 1800年代末の作品ながら古さを感じさせない。キリスト教が色濃く影を落としていて、それが貧富の差につながったり、人生…

『完訳 日本奥地紀行3 北海道 アイヌの世界』

イザベラ・バード 平凡社 昔、東北編は読んだことがあるが、北海道篇については読んだことがなかった。 友人と話していて、なぜ読む人が少ないのだろうか、北海道篇はマイナーなんだろうか、ひょっとしてアイヌを差別的に書いているのではないか、と話したの…

『悪女について』

有吉佐和子 新潮文庫 美貌の女実業家が登場するわけではない。27人の周辺の人たちに聞く形で物語は始まる。しかも死んだというところから始まり、女の生きざまがいろいろに語られる。

『開幕ベルは華やかに』

有吉佐和子 文春文庫 演劇界の裏話などが書かれており、事件が起きる。面白かった。

『神様の暇つぶし』

千早茜 文芸春秋 たまたま図書館で借りてきた。 死んだ父親の友人であるカメラマンと恋に落ちる。主人公は大学生。交友関係も出てきて、やや立体的な構成になっている。情交後の肢体がカメラでとらえられ、写真本となる。

『よろこびの歌』

宮下奈都 実業之日本社 久しぶりに宮下の小説を読んだ。文章が読みやすく内容もいい。 声楽を志す女の子が音大付属高校の受験に失敗するところから物語は始まる。新設高校の普通科に入学して、挫折感を味わう。そこからの変化が主人公の女の子の自立へとつな…

『しろがねの葉』

千早茜 新潮社 従来と小説のトーンが異なりびっくり。戦国末期の石見銀山が舞台。少女が銀山で働きながら生活の場としていく。欲望と死の影響を受けて生き抜いていく。ずっと候補だったが、この作品で直木賞受賞。

『青い壺』

有吉佐和子 文春文庫 無名の陶芸家が焼いた青磁の壺がいろいろな人のところを巡る話。 そして長旅をした壺は陶芸家のところにもどってくる。

『へんろ宿』

藤原緋沙子 新潮文庫 江戸回向院前の安宿に集うわけありの旅人たち。旅人からの訳ありの相談にのりながら元気をもらいながら帰っていく。こういう宿があったら、と思う。

『男ともだち』

千早茜 文芸春秋 これも直木賞候補だという。 イラストレーターの女性が主人公。恋人でもない男友達やつきあう男たち、同棲から別れていく男。さまざまな人間関係が描かれる。もちろん同性の友達についても。 前に読んだ同じ作者の『あとかた』にはあまりい…

『あとかた』

千早茜 新潮社 直木賞候補作 島清恋愛文学賞受賞作というのでどんな小説かと思い読んでみた。 若い男と女の自由な交流。セックスありセックスなし。死もある。自由ではあるがそれを自由というのか。よく分からない人間の交流。若い時というのはこうだろうな…

『この世にたやすい仕事はない』

津村記久子 新潮文庫 ストレスに耐えかねた前職をやめて、単純そうな仕事に就く。が、どの仕事もそれなりに難しい。 個人的には退屈した読書。

『ポトスライムの舟』

津村記久子 講談社文庫 私は人の名前を記憶するのは苦手だ。この小説も始めに登場人物の名前が漢字で書かれるが、あとはローマ字。他の登場人物もローマ字で、男性か女性かも分かりづらい。あえて他の姓で語られるようなところもある。分かりにくさのなかに…

『君は永遠にそいつらより若い』

津村記久子 ちくま文庫 大学卒業をまじかに控え、就職も決まって、手持無沙汰の日々。ぐだぐだとした日常が描かれる。ところが、何もないように見える日常の裏に暴力や哀しみが顔を見せる。 描き方がうまいなあと思わずにはいられない。

『水車小屋のネネ』

津村記久子 毎日新聞出版 家を出ようと思うんだけど一緒に来る?という問いかけから始まる、18歳の女性と8歳の女の子。母子家庭だったが、男性が来るようになり虐待が始まる。お母さんはそれを止めようとしない。 そこから始まる物語。しかし、暗い話にはな…

『絡繰り心中』

永井紗耶子 小学館文庫 『木挽町のあだ討ち』がよかったので本書を読んだ。 これもストーリーが読者になかなか想像できず、意外性を呼ぶ。 世を儚んだ女郎の持ち掛け心中だが、そこに人間関係が絡んでくる。 なぜ一人だけで女は殺されることになるのか。

『さよなら、ニルヴァーナ』

窪美澄 文芸春秋 14歳で少女を殺した少年Aの話。 気持ちのうえでは最後には救いがあるのだろうと読み進む。

『晴天の迷いクジラ』

窪美澄 新潮文庫 デザイン会社に勤務する男と女社長、女子高校生の3人を中心にした物語。物語の内容は重いが読後感はいい。

『大奥づとめ』

永井紗耶子 新潮文庫 大奥の社会を明るく描いている。しかも仕事として。 視点は新しいかもしれないが、とくに面白いと感じられなかった。

『僕のなかの壊れていない部分』

白石一文 文春文庫 出版社に勤務する男の話。題名に惹かれて読む。最後まで、なにが題名にあたる主題なのか、けっこう難しい。

『黒百合』

多島斗志之 創元推理文庫 夏休みを六甲の山中にある父の友人の別荘で過ごす14歳の少年。同い年の少年がおり、同年齢の女の子とも出会う。 恋心に芽生えた小説の展開。そこに、殺人事件が2つ起こる。 推理小説だが、誰にでもありそうな14歳の子どもたちの心の…

『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』(上下)

白石一文 講談社文庫 テーマに関連する引用文が幾つも出てくる。性的描写もあって、なかなか人に勧めにくい感じがするが、面白くは読めた。 白石氏の小説は何冊か読んだことになるが、東大卒の主人公とかややエリート向けという感じがしないでのない。そうい…

『私という運命について』

白石一文 角川文庫 つきあっていた男性からプロポーズされて、断る。男性は結婚してその後別れる。大病をする。そしてまた二人は出会う。その後も話は続いていく。 運命として人間関係を見た小説、といえる。運命を支持する、男性の母親も登場する。 疑えな…

『空と大地に出会う夏』

濱野京子 くもんの児童文学 養子縁組が話題になっている本として奥山さんから教えていただいた。 とくに養子縁組がテーマになっているわけではないが、登場人物に細部にこだわらない友人として登場する。ひと夏の主人公の成長が描かれる。

『一瞬の光』

白石一文 角川文庫 デビュー作だということだが、なかなか完成度は高い。 人事課長をしていて面接で落とした短大生と飲み屋で会うことになる。そこから始まる長い話。女性との付き合い、ビジネス上の課題がさまざまに絡み合い、ストーリーはなかなか読めない…

『ほかならぬ人へ』

白石一文 祥伝社文庫 最近のを読んで、白石一文の代表作というか、直木賞受賞作を読むことにした。 あわせて『かけがえのない人へ』が収録されている。 内容は出会いや別れ、だろうか。人間関係といってもいい。

『かさなりあう人へ』

白石一文 祥伝社 この人の小説は初めて。しかし面白く読めた。 人の出会いの妙を感じる。一人の人と一人の人ではなく、同じような出会いを繰り返す人の不思議さ。結婚が願望であるような関係ではなく、むしろこれまでの別れを思い出しながらの、中年の出会い…

『揚羽蝶』

泡坂妻夫 徳間書店 このところ泡坂に凝っている。しかし、この本は面白くなかった。というより、集中して書いているようには思えない。同じ書き手でもこうも違うのか、と呆れている。年取ったからなのか、病気でもしているのか、と感じた。

『折鶴』

泡坂妻夫 創元社文庫 短編集で4篇が納められている。4篇で泉鏡花文学賞を受賞している。 とくに「折鶴」がよかった。 それぞれ職人の世界を書いているが、「折鶴」は悉皆屋の職人。和服の洗い張りの世界で、古い時代を彷彿とさせる。そこにミステリー的な要…

『蔭桔梗』

泡坂妻夫 創元推理文庫 彼の小説は『湖底のまつり』を読んだことがある。印象深かった。 『蔭桔梗』にはこれを入れて11の短編が納められている。 全体に職人が登場する。とくに紋章上絵師の登場するものが多い。着物に関する話題が多く、そういう意味で味わ…