町田そのこ 中公文庫 ★★★☆☆ DVの夫から逃げ、自分を捨てたと思っている母との関係を回復する話。テーマには興味があるが、筋立てが作られ過ぎているきらいがある。その部分が減点、といえる。
戸矢学 河出書房新社 ★★☆☆☆ 読了。期待して読んだ本だけに、うまくごまかされた感じ。 ひとつでも確証があれば、そこから紐解けると思ったのだが、神社論で終わってしまった。 確かにきちんとわかるのは神社に何が祀られているか、であるのは分かるが、うま…
南杏子 幻冬舎文庫 ★★★★☆ 病院をサービス業と捉える、元銀行マンが病院の事務方をやっている。そこで内科医をしている30歳前後の女医。日々、嫌がらせのような病人がやってくる。 実家の母が亡くなるなど試練が続く。 過酷な病院の日常が描かれる。医者はど…
宮下奈都 集英社文庫 ★★★☆☆ 式直前に婚約が解消された女性の立ち直りが筋学。ドリフターズ・リスト(やりたいことのリスト)を書き、自分を見つめなおす物語。
辻原昇 文藝春秋 ★★★☆☆ 初めて読む作家である。つげ義春などが出てきて、物語の入りは気持ちよく読める。ところが、ラブドールやつきあう女たちの話になって、少しイメージが変わる。で、その後は変わったまま、物語は進む。 ラブドールが歩き始め、物語が動…
町田そのこ 新潮文庫 ★★★☆☆ ぎょらんは魚卵のような粒。人が死ぬとその人の想いが粒のようになって残る。嚙み潰すと死んだ人の想いを知ることができる。そういった話の連作。面白く読んだが長くて飽きた部分も。
宮下奈都 文春文庫 ★★★★★ 著者のデビュー作らしい。文章がみずみずしい。 それに若い男女のことで、文体にもあっている。テーマは記憶のようで、記憶の薄れゆく現在の私のテーマにもふさわしい。交通事故に巻き揉まれて、記憶が一日しか持たない女性と足が悪…
山本周五郎 新潮文庫 著名な割に読んだことのない作家だ。5年の在任中、ぐうぐう寝てばかり。しかし庶民の人気はある。そういう小説。 しかし読者を感心させようという思いが強くて、読みながら楽しくなかった。
南杏子 幻冬舎文庫 訪問診療医の話。病院での医療と異なる医療に戸惑うことが多いが、命との直接の出逢い。いい話ばかりだったね。
宮下奈都 文春文庫 夫のうつ病で田舎に引っ越して、そこでの暮らしを書いたもの。2年刻みで丁寧に描き出す。地域で開催される運動会への参加や、子育てへの思いなど。 いい文章を読んだという感覚に満たされる。
朝比奈秋 朝日文庫 朝比奈さんは作家であり医者でもある。 『私の盲端』は女子大生が人工肛門をつけた生活をおくる話。 便意がないまま便が人工肛門から出てくる。これを読まされると、人間が食べ物だけでなく出る方の配慮も大切なことがよく分かる。という…
出久根達郎 講談社 帯の文言「生年月日がまったく同じの二人の少年が奉公先の古書店で親しくなった。大逆事件の明治末年から、佃の渡しが消える昭和39年までの世相を背景に、古書を愛する庶民の哀歓を描く感動の長編」 古書を扱う人の想いが伝わり、よかった…
南杏子 光文社文庫 4人の女性医師の物語である。 大学受験の時に、4人とも落とされた経験を持つ。医者になってからも、いかに男性医師と待遇が違うか。女性医師の話ではあるが、それ以前に、ジェンダーの問題としてとらえるべきだと思う。よい小説だった。
南杏子 講談社 高齢のアルツハイマーの人たちが身を寄せ合って暮らす北海道の某所。 そこは楽園か、はたまた遺棄の地か。 夫の暴力から逃れて、幼い娘を連れて家を出た明日香が迷い込んだ山奥の村で、暮らし始める。一見平和に隠された大きな秘密に気づいて…
南杏子 幻冬舎文庫 大学病院から在宅で最期を迎える患者専門の訪問クリニックに異動する主人公。計6つの話から構成されている。 いわば、延命を中心とする医療現場から、どうやったら問題なく死を迎えることができるか。そのお手伝いとしての医療のあり方。 …
南杏子 小学館 南杏子は初めて読む。 終末期の患者の入院する病棟で働く30代の女性看護師の日々を描く小説。リアルさが伝わってきていい小説と言える。私も年取ってきて他人ごとではない内容。その面からもしっかりと読めた。
一穂ミチ 光文社 コロナ禍を舞台にした犯罪をテーマにした短編集。直木賞を受賞としている。 が、『日のあたるとこにいてね』がよかったので、あまり楽しくはなかった。 しかしパンデミックの後に出てくる小説としてはいいのではないかと思う。
辻堂ゆめ 小学館 表紙裏にこうある。「スミダスポーツで働く泰介は、認知症を患う80歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校2年生の娘とともに暮らしている。あるとき、万津子がテレビのオリンピック特集を見て…
一穂ミチ 集英社 2025年の夏、永い眠りから覚めた30年前の女子高生をめぐるせつなくて、すこし不思議な物語、と帯にある。 30年前の描き方がうまい。
石田千 新潮文庫 5つの短編が掲載されている。 一穂ミチさんが解説をしているので読んでみた。 なるほど、上手に書こうと思わない方がいいんだな、というような感想。
一穂ミチ 文藝春秋 子どもの頃、数度会った二人の少女。高校生になってまた出会いがあって、大人になって3度目の出逢い。お互い結婚していて、片方は流産を経験し、もう片方は少女がいる。 二人の交流は当然素晴らしいものだが、主人への目の向け方、それ以…
さだまさし 幻冬舎 けっこうな長編である。里見公園が出てくるというので読んだ。さだまさしの市川での暮らしが描かれている。
一穂ミチ 講談社 6篇の小説で構成されている。それぞれ関連はしていなくて、内容は濃い。 完成度は高く、良い短編である。
水上勉 新潮文庫 二つとも好みの小説である。社会派推理からスタートした水上勉が人間を書こうとしている。
リュドミラ・ウリツカヤ 新潮社 本好きの少女が図書館に勤務するようになりそこに来た男と結婚する。子どもが生まれ、その少女が学校に通うようになり、友人ができる。夫がその子と恋をする。しかし、ソーネチカは自分の恵まれた環境に感謝する。
高瀬隼子 集英社文庫 ある日、夫が風呂に入らなくなったところから小説は始まる。結婚して十年、妻は夫の妙な行動にどう対応していくのか。耐え難い夫の体臭や周囲の視線、義母からの非難。正常から逸脱。並行して子どもの頃飼っていた魚を処分する話が語ら…
辻堂ゆめ 宝島社文庫 人気絶頂のシンガーソングライターが渋谷のゴミ捨て場で目を覚ます。素顔を晒しても誰も分かってくれない。街頭ビジョンでは自分が自殺したという映像が流れている。目いっぱい不思議な出だしである。その不思議な感覚はなかなか解決の…
辻堂ゆめ 新潮社 書店で何気なく買った小説だが、面白かった。筋書きの紹介はしづらい。 帯の紹介をしておく。 「リモートワークを言い訳に引きこもっていた僕はある日、ずぶ濡れの女の子を拾った。1980年代からタイムスリップしてきたらしい彼女は、僕の大…
宮内悠介 朝日新聞出版 ソ連時代のエストニアを舞台にした小説。高校生直木賞を受賞している。 コンピュータ・プログラミングを話題にしている。 いい本だった。
城唯士 発売・幻冬舎 大学を卒業して就職するが、退職。母と友人のおばさんに案内されてスナックを手伝う。いろいろな経験をして、それまでぼんやりしていた人生観から生き方を考える。進路を決める男の物語。