木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『小川洋子と読む内田百閒アンソロジー』

内田百閒 小川洋子編 ちくま文庫 内田百閒には縁を感じる。全集もあり、生原稿も手元にある。 全集を読むには気力がいるが、文庫でアンソロジーを読んでみたくなって買った。 やはりいい。膨大な随筆もあるが、短編のよさは百閒ならでは。 このアンソロジー…

『植物はなぜ動かないのか』

稲垣栄洋著、ちくまプリマー新書。 タイトルにあまり魅力を感じなかったが、古生代からの進化を見ていくうち、恐竜や昆虫、哺乳類などとどう付き合ってきたのか、裸子植物、被子植物の戦略の違いなど、目を開かされる思いだった。子どもの頃読んでいたら、と…

『一九七二』

坪内祐三、文春学芸ライブラリー 私が大学を除籍になって、それまでやっていた馬券売り場のアルバイトもインフルエンザで出走停止になった。重い腰を上げて就職したのがこの年。ということで思い入れもひときわある。 考えてみれば、多くの出来事があった。…

『蝦夷太平記 十三の海鳴り』

安倍龍太郎著、集英社。 蝦夷に関する小説はなぜか読んでしまう。これまでも高橋克彦の『炎立つ』や『火怨』を読んだ。 鎌倉時代の末期に起こった安藤氏の乱に題材をとり、北方交易、アイヌ、蝦夷。奥州津軽を舞台に描かれる。北条得宗家を窮地に追い込み鎌…

『日没』

桐野夏生の近刊。岩波書店 桐野夏生は一時期読みふけったことがあるが、久しぶりに読んだ。 戯画化された物語ではあるがこわいし、現実にないかと言えばこの日常にひたひたと押し寄せている感じもする。 安倍前首相のしらを切る発言だったり、用語の使い方だ…

『海をあげる』

上間陽子さんの初エッセー集。筑摩書房 上間さんと言えば『裸足で逃げる』が話題になった。子育てをする少女たちを取材。厳しい現実が浮き彫りになった。 『海をあげる』は徹底した取材、というのではなく、日常から見えてくるものを救い上げる。沖縄の暮ら…