木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

『日没』

桐野夏生の近刊。岩波書店

桐野夏生は一時期読みふけったことがあるが、久しぶりに読んだ。

戯画化された物語ではあるがこわいし、現実にないかと言えばこの日常にひたひたと押し寄せている感じもする。

安倍前首相のしらを切る発言だったり、用語の使い方だったりが、私たちをどこに連れて行くのか怖かった。トランプが大統領になるとそのトーンは何倍にもなる。誰もが知っている事実を平気でそんなの嘘だという。で、コロナになると、横文字だったり、和製英語だったり、これまでにない日本語が横行する。あきらかに現実を正しく伝えようという感じがなく、遠くの虚構の世界に連れて行くような危うさが蔓延していた。

『日没』はそういう危うさと危惧を体現している。