木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『そうか、もう君はいないのか』

城山三郎 新潮文庫 妻の思い出を綴る。亡くなってから、出会いや旅を思い出す。城山三郎の、経済小説とは異なる私的な交情がいい。

『夏の口紅』

樋口有介 文春文庫 大学3年の主人公のもとに、15年前に家を出た父が死んだと連絡があり、形見を受け取りに本郷の古い家に行く。そこで会う季里子は口数が少ない不思議な女性。また、主人公には姉の存在が知らされる。 夏休みの10日間に経験する恋愛を描いた…

『図書館の神様』

瀬尾まいこ ちくま文庫 バレーボールに熱中していた主人公の女性が、新入部員にクレームをつけて、その子が自殺する。それでバレーをやめて、先生になる。非常勤の。興味もない図書委員の顧問になる。部員は一人だけ。私生活の話も出てくる。 不思議な味の小…

『ボロ家の春秋』

梅崎春生 中公文庫 戦後間もなくの日常が描かれている。梅崎は昔も読んだのだったか。たしか椎名麟三の家に行く途中に梅崎の家があって、ついでに原稿とりに編集者が寄ったとか読んだことがある。 いざこざというか、話題はあらぬ方向に流れていく。思っても…

『ソーネチカ』

リュッドミラ・ウリツカヤ 沼野恭子訳 新潮社 本の虫で容貌のパッとしないソーネチカの一生。不思議な感性の持ち主で、裏切られたり失望させられたりしても「なんて幸せなんだろう」と思う。作者はどうしてこんな人物を描いたのだろうと考えずにはいられない…

『黙祷の時間』

ジークフリート・レンツ 松永美穂訳 新潮社 ギムナジウムで開かれた追悼式で、遺影を見つめる少年がひと夏の出来事を思い出す。思春期の少年が美しい女の先生に憧れる。レンツ82歳で書いた高校生の恋。みずみずしい内容に驚く。

『オルガ』

ベルンハルト・シュリンク、松永美穂訳、新潮社 19世紀末から21世紀までを駆け抜ける小説と言っていい。主人公のオルガは幼くして両親を亡くし、ドイツ帝国の村で祖母に育てられる。祖母の反対を押し切って女子師範学校に進む。オルガとこの地方の農場主の息…