木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

2023-01-01から1年間の記事一覧

『さよなら、ニルヴァーナ』

窪美澄 文芸春秋 14歳で少女を殺した少年Aの話。 気持ちのうえでは最後には救いがあるのだろうと読み進む。

『晴天の迷いクジラ』

窪美澄 新潮文庫 デザイン会社に勤務する男と女社長、女子高校生の3人を中心にした物語。物語の内容は重いが読後感はいい。

『大奥づとめ』

永井紗耶子 新潮文庫 大奥の社会を明るく描いている。しかも仕事として。 視点は新しいかもしれないが、とくに面白いと感じられなかった。

『僕のなかの壊れていない部分』

白石一文 文春文庫 出版社に勤務する男の話。題名に惹かれて読む。最後まで、なにが題名にあたる主題なのか、けっこう難しい。

『黒百合』

多島斗志之 創元推理文庫 夏休みを六甲の山中にある父の友人の別荘で過ごす14歳の少年。同い年の少年がおり、同年齢の女の子とも出会う。 恋心に芽生えた小説の展開。そこに、殺人事件が2つ起こる。 推理小説だが、誰にでもありそうな14歳の子どもたちの心の…

『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』(上下)

白石一文 講談社文庫 テーマに関連する引用文が幾つも出てくる。性的描写もあって、なかなか人に勧めにくい感じがするが、面白くは読めた。 白石氏の小説は何冊か読んだことになるが、東大卒の主人公とかややエリート向けという感じがしないでのない。そうい…

『私という運命について』

白石一文 角川文庫 つきあっていた男性からプロポーズされて、断る。男性は結婚してその後別れる。大病をする。そしてまた二人は出会う。その後も話は続いていく。 運命として人間関係を見た小説、といえる。運命を支持する、男性の母親も登場する。 疑えな…

『空と大地に出会う夏』

濱野京子 くもんの児童文学 養子縁組が話題になっている本として奥山さんから教えていただいた。 とくに養子縁組がテーマになっているわけではないが、登場人物に細部にこだわらない友人として登場する。ひと夏の主人公の成長が描かれる。

『一瞬の光』

白石一文 角川文庫 デビュー作だということだが、なかなか完成度は高い。 人事課長をしていて面接で落とした短大生と飲み屋で会うことになる。そこから始まる長い話。女性との付き合い、ビジネス上の課題がさまざまに絡み合い、ストーリーはなかなか読めない…

『ほかならぬ人へ』

白石一文 祥伝社文庫 最近のを読んで、白石一文の代表作というか、直木賞受賞作を読むことにした。 あわせて『かけがえのない人へ』が収録されている。 内容は出会いや別れ、だろうか。人間関係といってもいい。

『かさなりあう人へ』

白石一文 祥伝社 この人の小説は初めて。しかし面白く読めた。 人の出会いの妙を感じる。一人の人と一人の人ではなく、同じような出会いを繰り返す人の不思議さ。結婚が願望であるような関係ではなく、むしろこれまでの別れを思い出しながらの、中年の出会い…

『揚羽蝶』

泡坂妻夫 徳間書店 このところ泡坂に凝っている。しかし、この本は面白くなかった。というより、集中して書いているようには思えない。同じ書き手でもこうも違うのか、と呆れている。年取ったからなのか、病気でもしているのか、と感じた。

『折鶴』

泡坂妻夫 創元社文庫 短編集で4篇が納められている。4篇で泉鏡花文学賞を受賞している。 とくに「折鶴」がよかった。 それぞれ職人の世界を書いているが、「折鶴」は悉皆屋の職人。和服の洗い張りの世界で、古い時代を彷彿とさせる。そこにミステリー的な要…

『蔭桔梗』

泡坂妻夫 創元推理文庫 彼の小説は『湖底のまつり』を読んだことがある。印象深かった。 『蔭桔梗』にはこれを入れて11の短編が納められている。 全体に職人が登場する。とくに紋章上絵師の登場するものが多い。着物に関する話題が多く、そういう意味で味わ…

『神様のカルテ3』

夏川草介 小学館 夏川草介にはまっている感じだ。 読みやすいし、内容もよく入ってくる。 今回は医者としての診断間違いがテーマ。

『冬瓜』

村尾文 西田書店 短編集第一巻とある。 6つの短編が納められている。 最初の「冬瓜」が本のタイトルにもなっている。船橋市文学賞を受賞しているから、船橋市に在住の方かもしれない。「冬瓜」は鹿島あたりの疎開地のことを書いている。この地の風習となっ…

『近代小説<異界>読む』

東郷克美 高橋広満 双文社出版 不思議な味の短編を集めた本である。短編ごとに書いていきたい。 泉鏡花「龍潭譚」古文体の少し読みづらい文章である。幼い子どもが道に迷い、自分の精神にも迷っていく。早くに亡くなった母を追い求め、姉に求める。多くの泉…

『神様のカルテ2』

夏川草介 小学館 1が面白かったので読んだ。 後半、死にまつわる話が多かったが、しっかり納得できる内容だった。 病気に関する知識が書けているので、嘘らしさや危うさがない。将棋の話も出てくるが、こちらも嘘らしさがない。 病院なだけに死は大きな話題…

『木挽町のあだ討ち』

永井紗耶子 新潮社 面白かった。これから読む人のために内容をばらすのは控えるが、あるあだ討ちを巡って関係者へのヒアリングが行われる。ヒアリングというよりも、関係者が、自分の生きざまを話す。そのうえで、最終的に落ちがあるのだが、いい話なのであ…

『神様のカルテ』

夏川草介 小学館 まずはよい小説だったと言いたい。 『始まりの木』がよかったので、夏川氏の本を読むのは2冊目。 医者が、病院のこと、暮らしのことを話していくストーリー。 それにしても激務。 しかし、患者との交流がいい。 2巻目も読んでみたいと思った…

『猫を抱いて象と泳ぐ』

小川洋子 文芸春秋 チェスの話である。 盤の下にうずくまってチェスを打つ青年。 互いにいかに強いのかを争うものだと思っていたが、チェスを通してコミュニケーションを行う。相手の性格も理解できる。読みながら、いい時間をもったように思う。

『始まりの木』

夏川草介 小学館文庫 民俗学のフィールドワークを通しての指導教官と学ぶ女性との交流。日本人の失ったものを学ぶ。 私の個人的な感想でいえば、第五話に影響を受けた。これまで死後は骨を海に流してほしいと思ってきたが、なにも宗教を捨てなくてもいいんだ…

『「発達障害」と間違われる子どもたち』

成田奈緒子 青春新書 発達障害の子どもが増えているように感じるが、著者は「発達障害もどき」が増えているのだという。大事なのは子どもの生活パターンを早寝早起きに変えることだという。 養育者もそうすることで、子どもとの信頼ができると。 とくに難し…

『百年の子』

古内一絵 小学館 子どもについての話かと思ったら、どうやら小学館の学年誌を中心とした100年史だった。戦中戦後の学年誌について、フィクションとして描いている。 読みやすくて、内容が頭に入ってくる。こうした書き方もあるんだな、と参考にはなった。

『霜月記』

砂原浩太郎 講談社 このところ時代ものにはまっている。 本書は神山藩シリーズの3作目。 親子3代の物語。祖父は引退して柳町で悠々自適。父は町奉行だったが突然辞めて行方不明。子どもがそれを継ぐ。それぞれ父と子の物語である。 砂原さんの小説は登場人物…

『黛家の兄弟』

砂原浩太郎 講談社 『高瀬庄左衛門尾御留書』がよかったので、その神山藩シリーズの2冊目を読んでみた。黛家の3兄弟の話だが、長期にわたる藩の内情も含めたストーリー。 大きく2部から構成されている。後半ぎりぎりになってから解決の糸口が明かされて、な…

『銀漢の賦』

葉室麟 文春文庫 時代小説はあまり読む方ではないが、続けて2冊読んでしまった。 藤沢周平の正当な後継者と表紙にある。先に読んだ『高瀬庄左衛門御留書』の砂原浩太郎は葉室麟の時代小説の後継者ではないかと思っていたから、読む気になった。 3人の幼馴染…

『高瀬庄左衛門御留書』

砂原浩太郎 講談社時代小説文庫 江戸時代のある藩で郡方をする男50歳の物語。妻に先立たれ、息子も事故で亡くす。残された息子の妻と手慰みに絵をかきながら暮らすが、藩の政争に巻き込まれていく。しかし、自分の生き方を堅持していく姿が美しいと言える。 …

『金木犀とメテオラ』

安檀美緒 集英社文庫 『ラブカは静かに弓を持つ』を読んで、同じ著者の本を読んでみたくなった。 この本は、北海道に新設された中高一貫校に進学した生徒たちの話。 とくに主人公二人は東大入学も可能な学力。 ピアノの趣味、絵画の趣味、学校のイベント。成…

『春の窓 安房直子ファンタジー』

安房直子 講談社文庫 安房さんの書いたものを初めて読んだが、多くのファンタジーを書いている。 この本にも「春の窓」など12編が納められている。なんと言うことはない、こまごまのファンタジーである。動物なども登場するが人の言葉を話す。 こういう書き…