木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

『ポトスライムの舟』

津村記久子 講談社文庫

私は人の名前を記憶するのは苦手だ。この小説も始めに登場人物の名前が漢字で書かれるが、あとはローマ字。他の登場人物もローマ字で、男性か女性かも分かりづらい。あえて他の姓で語られるようなところもある。分かりにくさのなかに踏み込んでいくような小説体験である。しかし読書を中断してしまうような気持ちにはならない。

ただ、芥川賞受賞というところまで理解が届かなかった。

『水車小屋のネネ』

津村記久子 毎日新聞出版

家を出ようと思うんだけど一緒に来る?という問いかけから始まる、18歳の女性と8歳の女の子。母子家庭だったが、男性が来るようになり虐待が始まる。お母さんはそれを止めようとしない。

そこから始まる物語。しかし、暗い話にはなっていかない。それが筆者の力量なのだろうと感じざるを得ない。

『絡繰り心中』

永井紗耶子 小学館文庫

木挽町のあだ討ち』がよかったので本書を読んだ。

これもストーリーが読者になかなか想像できず、意外性を呼ぶ。

世を儚んだ女郎の持ち掛け心中だが、そこに人間関係が絡んでくる。

なぜ一人だけで女は殺されることになるのか。