木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

『エトルリアの微笑み』

ホセ・ルイス・サンペドロ著、NHK出版

老人が主人公。ガンで残された命はわずか。生まれ故郷に別れを告げて、息子夫婦の住むミラノに旅立つ。移動の途中、ローマの博物館でエトルリアの遺物「夫婦の棺」が老人の心をとらえる。棺だというのに夫婦は幸せそうに微笑んでいる。

ミラノは薄汚れまがい物であふれた街だった。しかしそこで見つけたものは。

老人の心の変化。

昔読んだ『ライフサイクル・その完結』を思い出す。発達心理学エリクソンの死後、同じ研究者であった奥さんが書いたものだ。老人にとっての発達の課題について書かれたもので、乳児の発達課題である「信頼」と同じものが老後の課題だと書いてあった。信頼して死んで行ける。そんなことを思い出した。