木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

2022-01-01から1年間の記事一覧

『ひとりの双子』

ブリット・ベネット 早川書房 人種を扱った小説。性的マイノリティについても。 アメリカでは170万部も売れたというから、このテーマの関心の大きさが伺える。 双子のその後、そしてその問題にそれぞれの子どもが関わる。

『ザリガニの鳴くところ』

ディーリア・オーエンズ 早川書房 森で一人生きる女性の物語。 思わずのめり込まされるストーリーも素晴らしいが、湿地の自然描写も素晴らしい。 読んだ自分よりも読んでしまった本書に感謝。

『海を見た日』

M・G・ヘネシー すずき出版 アメリカ・ロサンゼルスの里親家庭。里親は何もしないで、子どもたち4人が暮らしている。ある時、その子どもたちの一人の母親を訪ねる冒険が始まる。計画を立てて出かけたのは2人だったが、4人の冒険の旅が始まる。 その冒険を通…

『わたしが鳥になる日』

サンディ・スタークマギニス 小学館 アメリカ・カルフォルニア州の里親に預けられた子どもの話。 自分は鳥で、空が飛べると思っている。ある里親との出会いが新しい認識をもたらす。

『コーヒーが冷めないうちに』

川口俊和 サンマーク出版 海外で読まれているというので読んでみた。 うん、なかなかよくできたストーリーだと思った。サンマークの本は初めて読んだ。

『苦役列車』

西村賢太 新潮文庫 同題名の小説以外に『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』が収録されている。 これで三冊目。無頼とも言えない、不思議な味の小説だが、気づいてみると、リズム感のある名文である。中卒で悲惨な生活を描いているが、文章はしっかりしている。

『芝公園六角堂跡』

西村賢太 文春文庫 タイトルになったもの以外に「終われなかった夜の彼方で」「深更の巡礼」「十二月に泣く」が収録されている。 没後弟子の西村賢太の在り方というのだろうか。引きづっているものの大きさを感じてしまう。

『どうで死ぬ身の一踊り』

西村賢太 角川文庫 読む気になったのはこの作家が急に亡くなったことによる。西村さんの死を惜しむ内容の記事が多かった。この文庫には文庫の題になった小説のほかに「墓前生活」「一夜」が納められている。 読後感としては、十分味わえたといっていい。同じ…

『生を祝う』

李琴峰 朝日新聞出版 子どもの権利は子ども自身にある。当事者にあるものと言える。では胎児に聞くことができたらどうなるのか。信仰をもっていない人でも、子どもは授かるものと考えたりするが、この近未来小説では、言語の基礎になる普遍言語で胎児に生ま…

『タンノイのエジンバラ』

長嶋有 文春文庫 本の題名になったこの小説以外に3つの小説が載っている。 隣家の娘を預かることになる話や真夜中に実家の金庫を盗むはめになる3兄弟の話などどこかおかしい話だが、静かな笑いを感じさせる。不思議な味の小説と言える。

『もうひとつの「流転の海」』

宮本輝 新潮文庫 9部にわたる「流転の海」のストーリーで、随所にでてくる局面を短編で書いている。それを集めた短編集、と言える。ただ、微妙に話が違っていて、どちらが本当なのか、あるいは両方ともフィクションなのか、と考えてしまう。「流転の海」を読…

『コゴロシムラ』

木原音瀬(このはらなりせ) 講談社文庫 因習の村で巻き起こる社会派ホラーミステリー、と帯にある。 残念ながらこの人の本を読むのは初めて。かなりの著作があるようだ。 ライターとともに取材に訪れたカメラマンが主役。山で道に迷い、ようやく民家にたど…

『野の春ーー流転の海 第9部』

宮本輝 新潮社 これが完結編。どのような終わり方をするのか、読み始めると同時に気になったが、思い通りというか、執筆37年という大河小説として、納得のいく終わり方だった。 主人公、熊吾の人生、そして妻、房江の生き方、息子の伸仁。大河小説には登場人…

『長流の畔--流転の海 第8部』

宮本輝 新潮社 いよいよ8部までこぎつけた。 なかなか良かった。 帯から紹介しておこう。 執筆35年 ついに次作・第9部で完結 東京オリンピック開幕前後、66歳の松坂熊吾は金策に窮した。大阪中古車センターをオープンさせるも、別れたはずの愛人・博美との関…

『満月の道--流転の海 第7部』

宮本輝 新潮文庫 9部まである内のこれは7部。 駐車場管理は奥さんや子どもにまかせて、主人公は中古車販売をスタートさせる。事業にはお金が絡んでくるが、やはり金に困る。これまでと同じく、信頼していた部下に裏切られる。さらに他にも金が入用になり、窮…

『慈雨の音――流転の海 第6部』

宮本輝 新潮文庫 第6部を読んだ。少しずつ経済的に立ち直り、駐車場の管理人を家族総出で行い、さまざまな出来事が起こる。独自に事業も始めつつあり、今後が楽しみである。

『花の回廊--流転の海 第5部』

宮本輝 新潮文庫 第5部は金のあった主人公がどん底を経験する。10歳の子どもを主人公の妹の貧しいアパートに預けて、駐車場経営を始める。 貧しいアパートにさまざまな事件が起こる。この子どもは筆者ということになるだろうから、そういう見方も面白いと思…

『天の夜曲――流転の海 第4部』

宮本輝 新潮文庫 第4部、主人公の熊吾一家は富山に移動。しかし熊吾は、富山に妻と息子を置いて大阪で事業を始める。が、信頼した部下に有り金を盗まれてほぼ文無しに。 妻と息子が大阪に戻ってきて終わるが、金がない。5部以降、どうなるのだろうか。

『血脈の火――流転の海 第3部』

宮本輝 新潮社 大阪に戻ってきて幾つかの事業を起こす。それによってさまざまなことが起こる。 台風による損害、実母の行方不明、などなど。 9部まであるうちの3部まで読んだ。これからどんな展開になっていくやら。

『蝉しぐれ』

藤沢周平 文春文庫 上下 正月にテレビで『蝉しぐれ』を見たが、3部構成になっているうち2部までしか見なかった。そこで文春文庫の本を買ってきた。 ドラマは本に忠実に作られているようで、3部のところをすぐ見つけられ読む。構成も素晴らしく、完成度の高い…

『地の星――流転の海 第2部』

宮本輝 新潮文庫 著者の父が主人公だという。この巻では妻と子どもの健康のため出生地の田舎に行く。知り合いの多くの死やある男との運命的な出会いなど田舎とはいえ出会いは多く様々なことが起こる。読み応えのある小説である。

『流転の海』

宮本輝 新潮文庫 終戦直後の著者の父を描いたものと言われている。後半は母の生い立ちも描かれる。 すでに完結しているが第8部まである。楽しみに読んでいきたいと思っている。