木ノ内博道の雑読ノート

読んだ本の備忘録です。

『流浪の月』

凪良ゆう 東京創元社 8歳の女の子が見知らぬ大学生の男子宅で2か月暮らす。男性は小児性愛者である。それだけで、ネット上では一生烙印が押されてしまう。しかし小児性愛的な言動はなかった。しかししっかりと烙印は押されて、社会人となってからも周りの視…

『プリズンホテル3冬』

浅田次郎 集英社文庫 多少滑稽な筋立てだが、登場人物など笑えてそれなりにリアル感もある。 この巻は死がテーマだろう。登場人物がそれぞれ死に直面する。

『手から、手へ』『童子』『月下の一群』

池井昌樹 『手から、手へ』集英社 『童子』思潮社 『月下の一群』思潮社 いずれも詩集。『手から、手へ』。 昨日の朝日新聞、鷲田清一さんの「折々のことば」で紹介されていた文章がよかった。 こんな感じだ。 「やさしい子らよ おぼえておおき やさしさは …

『プリズンホテル2秋』

浅田次郎 集英社文庫 4巻ある内2冊目。プリズンホテルに警察の慰安旅行とヤクザの団体がやってくる。歌手も。ドタバタのストーリーが展開されるが、人間のやさしさとはなにか考えさせられる。1巻完結。

『プリズンホテル1夏』

浅田次郎 集英社文庫 先に読んだ『熱帯』に出てきたので読んでみた。 ヤクザの叔父が経営するホテル。任侠団体専用のホテルに不思議な人が集って起こす不思議な事件。さすがと思ったのは登場人物の性格や言動がしっかりかき分けられていること。

『熱帯』

森見登美彦 文春文庫 ある人の話から始まってその登場人物からまた話が広がり、そのうち、話されている本のなかに読者が入り込む。本は最後まで読まれることはない。 千一夜物語が底本になっているようだが、ストーリーで読もうとすると混乱する。 楽しく読…

『テラプト先生がいるから』

ロブ・ブイエー 静山社 小学5年生のクラスと担任の先生の話。 クラスの登場人物が多く、なかなか理解しにくいが、先生を中心に、クラスが徐々にまとまっていく。それは家族にも影響を与えていく。

『夜のピクニック』

恩田陸 新潮社 『蜜蜂と遠雷』がよかったので話題作となる同じ著者の本を読んでみた。 高校のイベントとして、朝から翌日の午前中まで全校生徒が歩く。歩きながら物語は進む、という『蜜蜂と遠雷』と同じ構造。

『真間の手児奈 入水の謎』

中津攸子 龍書房 講演集である。 タイトルのもの以外に「真間の継橋の謎」「狩野浄天」「市川の戊辰戦争」が収録されている。住んでいる地域の論考なので面白く読んだ。

『チョコレート工場の秘密』

ロアルド・ダール 評論社 恩田陸が子どもの頃に読んで感動したというので読んでみた。 アナーキーともいえる展開。すごいけれど、という感じかな。

『蜜蜂と遠雷』

恩田陸 幻冬舎 ピアノコンクールの話である。エントリー、第一次予選から第三次予選まで。そして本選。500ページがほぼ選考にあてられている。というより、演奏される曲や演奏そのものについて。 専門用語も出てくるし、クラシックを知らないとついていけな…

『北のはやり歌』

赤坂憲雄 筑摩書房 筑摩選書 実は前にも読んだような記憶がある。というのも、東北について書かれたものは好きだから。そしてはやり歌のことなら大歓迎。 戦後の流行歌のスタートと田舎と都会。とくに東北から東京に出ていく人、残される人の想いは歌として…

『トンネルの森』

角野栄子 角川書店 第二次世界大戦なかで暮らす少女が主人公。小4の女の子で、筆者の少女時代と思われる。母に先立たれ、他家で暮らす。疎開をしてからの新生活もリアルに描かれている。

『影踏み』

横山秀夫 祥伝社 死んだ人の面影を見るために、影を凝視して空を見る。そういうのが影踏みだった。 この小説は双子の弟の存在と共に盗みなどアウトローの働きをする。

『雲』

エリック・マコーマック 東京創元社 男性の生い立ちが語られる。 出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた1冊は、黒曜石雲という謎の雲にまつわる話。青春を過ごしたスコットランドでの話。 幻想小説、ミステリ、ゴシック小説的で…

『円周率を計算した男』

鳴海風 新人物往来社 江戸中期の和算の世界を描く6篇。歴史文学賞を受賞している。 しかし、話題として和算にとらわれた男たちの、どちらかというと恋愛模様を描いたもののようにしか感じられなかった。もう少し和算の世界を描いてほしかったように思う。

『愛についてのデッサンーー佐古啓介の旅』

野呂邦暢 みすず書房 野呂邦暢の本には初めて出合うが、気負ったところのない文章がいい。 まだ若い男が父親の古本屋を継いで、依頼された生原稿を手に入れてきたり、本や出会いに絡む物語。 野呂邦暢は早世したようである。 みすず書房の「大人の本棚」の1…

『ニキ』

夏木志朋 ポプラ社 ポプラ社の小説新人賞を受賞している。 少数者の葛藤を描いたと言えばいいか。 しかし、少数者は意外に多数。だから簡単に排除はできない、ということ。 担任の先生の少数者としての性癖を通して主人公の性癖に気づいていく。 和解として…

『雪の断章』

佐々木丸美 創元推理文庫 初めて読むが、以前読んだような気もする。しかし楽しめて読むことができた。 孤児の文学というべきか、少女が青年と会って、その友人も含めた交流が描かれる。殺人事件が起き、誰がどうしてそうした事件を起こしたのか、少女の心情…

『ふたり、この夜と息をして』

北原一 ポプラ文庫 高校2年生の同級生たちの交流。 顔にアザのある少年が主人公。 登場主人公に悪い人が出てこない。 心優しい友人たちだけの、しかし悩みをもつ者の交流だったりする。

『定価のない本』

門井慶喜 創元推理文庫 古本業界の話と言えば、梶山季之の『せどり男爵数奇譚』が面白かった。 この本は戦後まもなく、GHQとの関係で古い本が売れる話だが、それなりに読ませてくれた。しかし、同業者の死をめぐって、かなり強引な筋になっていて、もう少し…

『遣灯使』

多和田葉子 講談社文庫 表題以外に「韋駄天どこまでも」「不死の島」「彼岸」「動物たちのバベル」が収録されている。 従来の語りとは異なる手法の小説と言っていい。

『ベルリンは晴れているか』

深緑野分 筑摩書房 ドイツ、ヒットラー時代の第二次世界大戦前夜から戦争直後まで、一人の女性の生きざまが描かれている。 戦後と戦前が章ごとに書かれていて、最終的にはそれがまとまる形になっている。戦後の部分はずいぶん強引な出会いと筋書きだなと思っ…

『悦楽の園』

木地雅映子 ジャイブ㈱ 発達障害の少年を好きになってしまう女の子の話。引用部分のご紹介。 若干知恵遅れとも思われる少年が女性に質問する。「オレ、ずーっと、いるから、うまれてくると、思って⋯ちゃんと、おとうさんとおかあさんとで、ほ、ほしいって思…

『ボッティチェッリの裏庭』

梶村啓二 筑摩書房 『野いばら』『使者と果物』がよかったので読んでみたが、この2冊のような感じではなかった。 もちろん、ストーリーの運びなどよく調べて書いているとは思う。ただ、先の2冊のようなわくわく感がなかった。

『使者と果実』

梶村啓二 日本経済新聞出版社 『野いばら』がよかった。で、次に書かれた『使者と果実』を読んだ。よいできの小説を読んだという実感がこみあげている。 満州でスタートして、ドイツに行き、ブエノスアイレスに。それが出会ったおじいさんの語りとなって小説…

『惑星の岸辺』

梶村啓二 講談社 『野いばら』の読後感がよかったので、同じ作家の『惑星の岸辺』を読んでみた。この作家ならではの文章が素晴らしい。 しかしSF仕立てのようなストーリーが邪魔をして、『野いばら』のように気持ちが引き込まれていくことはなかった。 約60…

『霜天の虹』

北原耕也 本の泉社 七戸、満州。国と民族を超えた物語。 いい本だった。 父殺し。しかし展開は意外の方向にいく。

『人間の幸福』

宮本輝 幻冬舎 一人の女性が撲殺される。犯人をめぐるマンション住まいの人々の人間模様。 よく考えられて書いてあるが、感銘を受けるような内容ではなかった。

『ひと夜の月』

石神聰 東洋出版株式会社 亡くなった妻に会う旅についての物語である。それも旅に出た先は霊界ともいえる所。さまざまな出会いのなかで、妻に出会うだけではない物語が始まる。